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「クリエイティブ労働」と「マニュアル労働」

日本では5684万人の国民が働いていますが、これらの労働者は一般的には

という分け方で分類されます。しかし、哲学的な観点から労働市場を考えるにあたっては、以下の分け方がより適切ではないかと思うのです。

  • クリエイティブ(創造的)労働マニュアル(隷属的)労働

この二つは、以下のように対比できると思われます。

  1. クリエイティブ労働においては新規性が求められるが、マニュアル労働においては正確性が求められる
  2. クリエイティブ労働においては個性が尊重されるが、マニュアル労働においては従順さが尊重される
  3. クリエイティブ労働においてはが量に優先するが、マニュアル労働においてはが質に優先する
  4. クリエイティブ労働は分業が困難だが、マニュアル労働は分業が容易である
  5. クリエイティブ労働は独立的であるが、マニュアル労働は集約的である

マニュアル労働であればパートタイム労働である、という誤解がよく見受けられますが、決してそんなことはありません。パートタイム労働者を統括・管理する立場であるフランチャイズの店長や工事の現場監督や戸別訪問系の営業など、マニュアル労働の要素を多く備えたフルタイム労働(正社員)は数多くあります。

少しだけ話題になりました、以下の記事はその好例です。

まるで囚人服のようなジャージを着てラジオ体操のようなものをやっているのですが、この新人研修請負業者は研修の意義についてこう答えています。

Q.

一体なぜこのような「過酷」な新人研修を行うのでしょうか?

(個性をつぶすことにも?)

A.

「新入社員たちは『自分が自分が』というのを出すと、どうしても学生の常識とか、子どもの頃の甘えが出る。基本的には『会社のカラーに合わせる自分づくり』」

(アイウイル 浜中孝之氏)

 彼らには上層部の命令に従順であることと、長時間労働や転勤にも堪えられるほどタフであること、そして命令された作業を能率的に処理することしか期待されていないのです。これは大卒の新卒採用の正社員の研修であるようですから、非正規=単純労働、正規=総合職、といった直感的な分類が誤っていることをよく示しています。

1950年代には、日本の労働者の6割弱が自営業者とその家族でした*1。しかし、現在では15%弱を占めるにすぎなくなっています。自営業者は生産性も収益も概して低いものですから、人口が大都市に移動し雇用者数が増加することは効率化の象徴といえるのですが、その反面、例外なく自ら考えて事業をする必要があった自営業者のうち少なくない部分が、上層部のエリートが定めた手順に従って労働するだけの高機能ロボットへと役割を変えていることを示しています。

日本の経済成長は、国民大多数が各々の持ち場でほどほどの創造性を発揮する構造から、ごく一部の有能な人物が定めた方法に従ってその他の大多数が能率的に労働する構造へと変化することで達成されたのかも知れません。そのメリットを我々はいつも享受しているわけですが、その反面、大多数の国民に知性や創造性が期待されなくなり、暇さえ有ればパズドラに汲々とするような人間が量産される結果をも招いたのかもしれません。