データで見る:コンゴ民主共和国の女性

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朝日新聞の三浦英之記者によると、コンゴ民主共和国、とりわけ東部は*「女性にとって世界最悪の場所」*だそうです。上記のウェブサイトに、その悲惨な現状が写真を交えて説明されています。顕著な事実として、

>米公衆衛生研究家が11年に発表した報告では、06~07年の1年間に40万人以上がレイプされた。1日1100人以上。関係者は「実際の数は誰にもわからない」

とのお話です。

しかし、実際のところはどうなのでしょう。女性にとって世界最悪の場所、という表現は果たして妥当なのでしょうか。データで見ていきたいと思います。

 

基本情報

コンゴ民主共和国は、人口77,257,000を誇る、アフリカ中央に位置する国家です。[*1]男女比はほぼ均等です。ちなみに、先進国では女があまり、後進国では男があまる傾向にあります[*2]。

GDPは326.9億USドル[*3]。これは隣国コンゴ共和国の2倍以上ですが、1人あたりの購買力平価[*4]は720ドルにすぎず、日本の51分の1にあたります。労働生産性は低く、まだまだ実物的な貧困の中にある国家だといえます。

 

レイプの被害

米公衆衛生研究家が2011年に発表したという

>報告では、06~07年の1年間に40万人以上がレイプされた。

 

という暗数を勘案したデータについて、他国と比較してみましょう。

コンゴ民主共和国の、07年の時点での女性人口は、約29,900,000人です。このうちの40万人は、1.33%にあたります。

 

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 "WHO,DHS(2013-2014)資料より作成")

 

現在の年齢別人口構成比とさほど変わらないと仮定すると、40歳台以下が女性人口のうち9割を占めます。警視庁によれば、強姦被害のうち約97%ほどが10歳以上40歳台以下で占められますから[*5]、コンゴ民主共和国についても総人口の54.2%(16,205,000人)が強姦の脅威に晒されていると見てよいでしょう。また、内閣府の調査[*6]によると、強姦被害にあった女性のうち42%が、複数回に及んでそうした被害にあったと報告しています。つまり、同じ女性に被害が集中する傾向が見受けられるということです。

複数回被害にあった場合の被害の回数を均一に2回と仮定すると、発生する強姦行為のうち66.9%がはじめて被害にあう女性に向けられており、残りの33.1%は既に被害にあったことがある女性に向けられたことになります。コンゴ民主共和国でも同じ比率だと考えるなら、初回被害者に向けられる強姦は26万7600件になります。

つまり、強姦された経験のない*強姦適齢期(10-49歳)の女性がコンゴ民主共和国で1年間生活すると、1.6%の確率で強姦の被害に遭います*。10歳になった時点では誰も強姦された経験がないと仮定した場合、*強姦適齢期を脱するまでの40年間の間に、残念ながら47.6%の女性は強姦被害を経験します*。この確率は、日本においては9.8%ですから[*6]、強姦被害に遭う可能性という観点において、コンゴ民主共和国は日本[*8]と比較して4.8倍リスクが高いことを意味します。

 

[*1]:United Nations Department of Economic and Social Affairs,2015

[*2]:[農林水産省](http://www.maff.go.jp/j/tokei/pdf/zusetu_05.pdf)

[*3]:世界銀行

[*4]:USドルを基準に一物一価が成立したと仮定した場合(全世界で貿易障壁がなくなり、すべての場所で同じ財が同じ価格で入手できる状態)に、当該国民が支出できる額をUSドルで換算したもの。

[*5]:警視庁,[都内における性犯罪(強姦・強制わいせつ・痴漢)の発生状況 ~ 平成26年中 ~](http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kouhoushi/no1/koramu/koramu8.htm#03)

[*6]:男女間における暴力に関する調査

[*7]:[*6]より、50歳代(50-59)女性のうち9.8%が1回以上強姦被害に遭ったことがあると答えている。40歳代でもほぼ等しいため、強姦適齢期間の被害確率に推定。

[*8]:この場合の日本とは、概ね1970-2010間の治安状況の日本を指す。現在では無いことに留意。コンゴ民主共和国は2006-2007年の治安状況。